植物考古学 しょくぶつこうこがく
植物考古学
しょくぶつこうこがく
遺跡および周辺域から出土あるいは産出する植物遺体から、人間と植物とのかかわり、さらには植物を基層にする生態系とのかかわりを研究する領域である。東アジアでは、穀類を主とする栽培農耕の歴史の解明が主流であるが、1970年代以降では、花粉分析が盛んになるにつれ、植生復元や人間による植生改変も主要な課題に加わった。実証的な研究の対象となる植物遺体は、花粉・胞子・植物珪酸体といった微小なものから、種子・果実、木材といった大型のものまである。また、人間が直接利用した遺物から、直接かかわらなかった環境情報としての遺体まで含まれる。植物遺体の保存性は還元状態で高いので、低湿地など水辺環境をもつ遺跡で有効性が高い。一方、鉱物質の植物珪酸体や燃焼によって炭化した種子・果実や木材は乾陸地でも保存性が高い。そこで、それぞれの材料の利点を生かし、多岐にわたる資源の利用方法を解読するだけでなく、環境とのかかわりを総合的に捉える方法が開発されつつある。
(辻誠一郎)
以上、転載
