甕棺 かめかん

甕棺
かめかん

甕棺葬は、成人埋葬専用のものとして特殊に発達した器高80〜120㎝ほどの大型の甕棺を用いた埋葬習俗で、弥生時代前期中頃から後期後半、なかでも中期を中心として北部九州の限定された地域で盛行した。弥生時代早期から前期前葉にかけて、乳幼児用に用いられていた大型壺が前期中頃にさらに大型化し、成人埋葬専用の甕棺へと発展した。甕棺に埋葬すれば、乳幼児であっても骨の残りがよいことが長年の経験から認識され、死後の再生を願う観念と結びつき、成人用の大型甕棺製作へと進んだものと考えられる。その技術的背景には、タタキ技法の存在があった。製作技術の難しさから、甕棺製作には専門工人集団の存在が想定される。甕棺の製作技術には地域差があるが、工人集団の差異や、工人集団の形成過程の地域差を表していると考えられる。また甕棺は土器であることから、棺自体が編年可能なことに加えて、中国漢代の鏡などが副葬されることがあり、弥生時代の絶対年代を推定できる有利な条件を備えている。

(橋口達也)

以上、転載