棺・槨 かん・かく
棺・槨
かん・かく
中国の『家礼』という書物によれば、古代中国においては、壙のなかに槨、槨のなかに棺を納めることがよいとされる。楽浪漢墓中の木槨墓では方形の壙を穿ち、角材で室を造り、その内部に板材で槨を設け、木棺を納めている。日本では古墳などの埋葬施設に、これらの壙・室・槨・棺の概念を借用し命名しているが、その用語法には混乱があり、大正時代初期には喜田貞吉と高橋健自との間で、いわゆる「棺槨論争」が交わされた。この論争を経て、近年では埋葬施設を設けるための墓穴を壙とし、遺骸を安置する容器を棺と呼ぶことにはほぼ異論はない。しかし、その間の施設については、ある程度の広さを有するものを室、棺を被覆・保護するだけのものを槨と称することが多いものの、納棺する時期により、室と槨を区別する見解もある。特に、古墳時代前期に多い竪穴式石室と、竪穴式石槨の用法には混乱が認められるが、多くは石室の名称が踏襲されているのが現状である。
(福尾正彦)
以上、転載
