都蘭熱水郷吐蕃墓群 とらんねっすいきょうとばんぼぐん

都蘭熱水郷吐蕃墓群
とらんねっすいきょうとばんぼぐん
Dulan Reshuixiang Tubo-muqun

(1)中国・青海省都蘭県熱水郷にある吐蕃(チベット)時期の墓群。青海省文物考古研究所が1996年までに60基の墓を調査し、数多くの金銀器・木器・骨器・石器・陶器・織物などの副葬品が出土した。これらの墓の立地は山に寄りかかって川に臨み、墳丘は方形台状と円形の2種類がある。墓室には単室・双室・多室などのタイプがあり、単人葬・男女2人合葬・3人合葬墓がともに存在している。屈葬が主流をなし、二次葬も一定の数を占める。規模のもっとも大きな血渭村1号墓は、陪葬施設の面積が1500㎡に及び、27の円形土坑と五つの長方形土坑から構成され、87頭のウマのほかウシ・イヌなどが殉葬されている。出土品で注目されるのは織物で、合計350余点、130種類がある。唐から輸入した錦・綾・絹・紗・絣などは、いずれも保存状態が良好で、唐代紡績工芸を研究する重要な資料となる。そのほか18種の中央アジアまたは西アジアの製品も発見され、特にソグド錦の数が多いといわれている。これらの墓群は、7世紀中葉以降のもので、吐蕃支配下の吐谷渾邦国のものと推定されている。

(2)中国・青海省都蘭県熱水郷にある吐蕃(チベット)貴族の墓群。1999年、北京大学考古文博院と青海省文物考古研究所が4基を調査した。墳丘は方形でその上に1〜2の漏斗形の版築井戸を設けている。墓室の構造はそれぞれ違い、石・塼・木で築いた長方形前・後双室と前・中・後・左・右5室タイプ、材木で築いた長方形左・中・右3室タイプおよび「凹」字形左・中・右3室の石室タイプがある。これらの墓はほとんど盗掘されていたが、織物・木・金銀・革製品が数多く出土した。織物の多くは唐からの輸入品である。3号墓の墓道で発見された木の箱の表面には鹿狩り、笙と琵琶を演奏する胡人などが描かれ、吐蕃時代の服装や伎楽を研究する貴重な資料である。出土品のうち、古代チベット語で書かれた碑文・木簡などは注目される。3号墓から出土した碑文にblon(論)、木簡にzhang(尚)の名字が見られ、いずれも吐蕃王族と婚姻を結んだ貴族である。これらのチベット語資料に基づき、熱水郷吐蕃墓は、吐蕃時期の吐谷渾邦国墓とは異なり、7世紀中葉以降、吐谷渾故地を支配した吐蕃の貴族墓と推定できる。

(蘇哲)

以上、転載