蛇行鉄剣 だこうてっけん

蛇行鉄剣
だこうてっけん

当初から身部に3〜6ヵ所の屈曲点を有することを意図して製作された古墳時代の特異な鉄剣。蛇行剣と呼ぶことが多い。鋒を含めた先端部の主軸と、関から茎にかけての主軸はほぼ直線に並ぶ。身部に木目が残存していることもあり、その場合は幅広の鞘に納められていたと考えられる。日本では近畿と南九州にやや密に分布し、中小規模の円墳や地下式横穴墓を中心に60例以上の出土が知られている。国産説が有力であるものの、朝鮮半島でも全羅北道の石槨墓から1例出土しており、その故地をめぐっては慎重な意見もある。中期から後期に属するものとされていたが、近年北九州市から前期にさかのぼる例が確認された。その形態から蛇龍信仰に結びつけ、さらに進めて再生信仰を求める考えが示されている。最近では、古墳時代に神仙思想などの影響をうけ、あらたに創出された威儀具とする新見解もあり、民族学などの関係分野の成果をふまえた検証、さらには研究の深化が望まれている。

(福尾正彦)

以上、転載