角杯 かくはい
角杯
かくはい
ウシ科に属する動物の角を利用して製作した杯のことをいう。スキタイ人の慣習では角杯に酒を注ぎ、互いに飲むことで友好を結んだとされる。中国では河南省洛陽漢墓の墓室壁画にある「鴻門の会」の場面に、項羽が羊角の杯をもつ姿が描かれ、盟約の際の酒杯として用いたと見られる。また、湖南省長沙馬王堆1号漢墓や広東省広州漢墓からは、木製や土製の犀角形品が出土するなど副葬品としても用いられる。朝鮮半島では釜山広域市東三洞貝塚の櫛目文土器(新石器)時代の角杯型土器を最古例とし、三国時代新羅・加耶地域の古墳から角杯を模した陶質土器や金属器製・漆器製品が出土するほか、慶州市天馬塚では牛角の実物が出土するなど、牛角崇拝の儀式に用いたと考えられる。日本列島では6世紀代を中心に角杯形の須恵器・土師器および角杯を背負う人物埴輪などが出土するが、尖底部分をやや曲げるだけの形状や円錐状を呈する。主に北陸・東海・近畿周縁の古墳や集落遺跡から出土する。
(岡田裕之)
以上、転載
