車輪石 しゃりんせき

車輪石
しゃりんせき

古墳時代に用いられた碧玉製腕飾の一種。江戸時代に「車輪石」と呼ばれ(『雲根志』)、その名が現在も踏襲されている。オオツタノハ製の貝輪を模倣して製作された。卵形に近い扁平な環状品で、表面には放射状の彫刻がある。中央に卵形もしくは円形の孔を持ち、卵形孔の製品が祖形である貝輪に近いが、出土古墳から見れば円形孔の製品も古くさかのぼるものがあり、孔形だけで編年するのは危うい。奈良県島の山古墳のように80点も副葬した例があり、出土状態と合わせてその性格を理解する上で参考になる。前期から中期初頭を代表する副葬品であり、石釧・鍬形石と合わせて碧玉製腕飾類と総称される。なかでも、石釧とは密接な関係を有し、形状が共通することもある。近畿中枢部を中心に九州西部から関東にかけて分布し、初期のヤマト王権の勢力浸透を知る上で欠かすことのできない威信材である。

(福尾正彦)

以上、転載