抜歯 ばっし
抜歯
ばっし
習俗・風習としてある一定の基準の下に健常な歯を人為的に抜き去ることをいう。中国では、山東省〜江蘇省北部から出土する約6500年前の人骨に抜歯が認められる。朝鮮半島では、BC1世紀代の女性人骨数例に抜歯が認められるのみである。わが国における抜歯風習は縄文時代中期末の人骨に認められ、その後、縄文時代後期から晩期にかけて盛行する。弥生時代の山口県土井ヶ浜遺跡出土人骨にも抜歯の痕跡が見られるが、縄文人や西北九州弥生人の抜歯形式とは異なるとされ、外来要素の影響が想定されている。古墳時代には抜歯風習は衰退した。抜歯の対象は切歯・犬歯・第1小臼歯といった口を開けたとき容易に認識できる歯種に限られる。抜歯の意義・目的については、成人式・服喪・出自などが推定されているが、近年ではこれら諸説を再検討する動きがある。
(藤田尚)
以上、転載
