版位 へんい・へんに
版位
へんい・へんに
版位あるいは版と呼ばれるものには、『内裏式』『延喜式』など、平安時代に編纂された儀式書や式の類にしばしば見え、朝廷の儀式において、参列者が占めるべき位置を示すために使われた標識の一種。方形の厚い板状のものが水平に置かれて、垂直に立てる標と区別される。古くは「養老令」に版位の規格を定めた版位条があり、また『令集解』に引用されている大宝令の注釈書「古記」に版位の解説が見えるので、日本では大宝令の施行期間中には版位が使われ始めていたことがわかる。版位の実物資料としては、平城宮跡から出土した「公事」と「私事」の刻字がある2個の塼が知られる。版位の制度は、古代に中国から周辺の諸国に伝わったものと考えられる。たとえば、中国・黒龍江省農安市にある渤海の上京龍泉府跡から出土した「版位」の刻字がある塼の断片は数少ない実例の一つである。韓国・ソウル特別市にある李朝(朝鮮)時代の景福宮や、ベトナム・フエ市にあるグエン(阮)王朝の王宮に現存する石造の版標は、版位の名残であろう。
(西谷正)
以上、転載
