オルドス式青銅器 おるどすしきせいどうき
オルドス式青銅器
おるどすしきせいどうき
中国大陸・万里の長城の北部で、黄河が大きく屈曲する地域すなわちオルドス(鄂爾多斯)草原を中心に、西は寧夏から東は遼寧地方まで広く分布が見られる青銅器をいう。ここは中原の農耕文化と、モンゴルの遊牧騎馬文化の接触地帯で、独自の特色ある青銅器文化を残した。青銅器は武器・工具・装飾品・生活用具・車馬具など多岐にわたる。武器には短剣・戈・矛・鏃・闘斧・棍棒頭、工具には斧・鑿・錐、装飾品には頭飾・頸飾・帯金具・佩飾品、生活用具には刀子・鍑・匙・鏡、そして、車馬具には銜・轡・面繋・辻金具などの馬具と、車軸頭などの車具がある。それらには、多種多様な動物文で装飾されている点が特徴的である。ことに帯金具にあっては、トラ・オオカミ・ヒツジ・シカをはじめとした複雑な動物意匠で飾られたものが目を引く。青銅器の中では、短剣と刀子の出土量がもっとも多いのは、それぞれ遊牧民の武器と調理具として必需品であったためであろう。
青銅器は、商代に入って出現するが、後期に当たるBC13世紀にはかなり発展し、その後、春秋時代に最盛期を迎えたが、後漢時代ごろまで続いた。そのうち春秋時代後期からは、銅戈・銅矛・銅帯鉤・銅鏡などにおいて、中原からの流入、あるいはその影響を受けたものが認められるようになる。オルドス式青銅器は文字どおり、オルドスとその周辺に生まれた土着の文化であるが、その変遷過程でスキタイ文化と接触あるいは相互の影響を持った。オルドス式青銅器文化の担い手は、古文献にそれぞれ現れる前半が狄人で、後半が匈奴に関連するといわれる。
(西谷正)
以上、転載
*辞典解説文より漢字ピックアップ
鑿
サク、うが(つ)、のみ
銜
はみ
轡
くつわ
面繋
おもがい
