麻 あさ


あさ

クワ科の大麻やイラクサ科の苧麻(カラムシ)・アカソ・亜麻・黄麻などの総称、またはその繊維。大麻は一年草、苧麻は多年草で、狭義の麻は大麻をいう。大麻の繊維は丈夫で、弾性・耐水性に富み、衣類以外にも網・綱・帆布・蚊帳などに利用され、中世の日本に朝鮮から木綿が導入される以前には、麻(苧麻・大麻)は植物質繊維の主流であった。苧麻のほうが大麻より薄い布を作ることができ、特に上質の苧麻は、のちに上布と呼ばれた。

大麻の栽培は南ロシアで始まり、世界各地に広まったらしい。遺物としては編布・織布・縄・紐などがあり、蓆目の圧痕土器として一部が残る場合がある。中国では古くから絹とともに織物の材料として使われてきた。大麻は新石器時代に属する西安・半坡遺跡や浙江省河姆渡遺跡などで、圧痕土器や土中に印痕が見つかっている。史書には枲とも記されている。苧麻布は古いものが浙江省銭山漾遺跡(新石器時代良渚文化)で出土している。麻や苧麻から編布に用いる繊維を取るには、刈り取って表皮を繊維のみにするオコキ作業が必要で、表皮の表面をこく(剥ぐ)道具がオヒキガネ(苧引き金)である。オヒキガネは火打金や穂積具に似た形で、弥生・古墳時代の鉄製手鎌状品のなかには、オヒキガネとして使えるものがある。縄文時代にはスクレイパーや大型の剥片を利用したであろう。表皮を剥いだものがオ(青苧(あおそ))で、オの繊維をつなぎ合わせて苧績み(おうみ)を行い、紡錘や糸車で撚りをかけて糸を作る。繊維に撚りをかける道具が紡錘車で、縄文時代には土製有孔円盤がその役目を果たしたであろう。縄文時代の例として、福井県鳥浜遺跡(前期)の編布などが挙げられ、弥生時代になると西日本でも苧麻や大麻の織布の出土例がある。正倉院に残る麻布の多くは苧麻製である。

(中山清隆)

以上、転載

 

*辞典解説文より漢字ピックアップ


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