猪 いのしし
猪
いのしし
ユーラシア大陸からアフリカ北部の、温帯から熱帯にかけての森林地帯に分布する雑食性の偶蹄類。約9000年前に西アジアや中国で家畜化されてブタとなった。日本列島には本州・四国・九州各島にニホンイノシシが、南西諸島には矮小型のリュウキュウイノシシが分布し、ブランキストン帯を隔てた北海道には分布しない。イノシシは旧石器時代以来、シカと並ぶ重要な狩猟獣となり、人間との関わりは深い。日本列島では野生では分布しない縄文時代早期の伊豆大島下高洞遺跡、弥生時代の三宅島コハマ遺跡など島嶼部や、北海道本輪西遺跡などの縄文時代後・晩期、続縄文時代の遺跡からイノシシが出土することを、加藤晋平はイノシシを飼養していたと考え、西本豊弘は縄文ブタの存在を指摘するが、反対論も強く議論が分かれる。縄文時代晩期の山梨県金生遺跡では、土坑の中に118個体の焼けたイノシシの幼獣の下顎骨が入っていたり、東北地方の縄文時代後・晩期に多いイノシシ形土製品の存在や、イノシシの幼獣の埋葬例が見られることも、縄文人にとってイノシシが特別な存在であったことを示唆する。イノシシは足が短いため、多雪地帯での行動が苦手で、現在では北陸から東北地方の日本海沿岸部には分布していないが、縄文時代の東北地方の遺跡からは多く出土する。
(松井章)
以上、転載
