牛 うし


うし

ヨーロッパの後期旧石器時代の洞穴壁画には、ウマと並んで原牛(オーロックス)や野牛(バイソン)が描かれ、重要な狩猟獣であったことがわかる。ウシが最初に家畜化されたのは、BC9000年紀の西アジアで、水牛やゼブ牛は遅れる。日本では岩手県花泉からバイソンの一種、ハナイズミモリウシが出土しているが、完新世を待たずに絶滅した。縄文時代の貝塚からウシの出土が記録されているが、近年の発掘では出土例は少なく、ウマとともに後世の混入を誤認した可能性が強い。ただ近年では、東京都伊皿子貝塚の弥生時代中期の方型周溝墓から出土した頭部が最古であるが、西日本で確実に出土するのは古墳時代中期以降で、畿内ではウマに遅れて6世紀に一般化する。文献では「魏志倭人伝」に「牛なし」とあり、『日本書紀』安閑紀2年に牛牧の設置の記事が見える。『延喜式』には典薬寮の別所として乳牛院があり、但馬・周防・尾張の「正税帳」には、牛乳を煮詰めた蘇を貢進したことが記される。在来牛としては山口県萩市の沖に位置する見島に、朝鮮半島の伝統種と共通性がある温和な性質を持った見島牛が天然記念物として保存され、鹿児島県口之島には再野生化した口之島牛が自然繁殖している。

松井章)

以上、転載

 

 

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