ナウマン象 なうまんぞう
ナウマン象
なうまんぞう
象目(長鼻類)の大型化石哺乳類。エドモント・ナウマン(独)の名に由来し、静岡県浜松市発見の象化石に槇山次郎が命名した。30万〜16000年前(更新世中期から更新世後期末)に中国大陸から日本列島に生息したが、現在は絶滅している。周口店動物群の要素の一つで、中国大陸では更新世後期まで、北部地域でも生息していた。中国大陸と陸続きのころ、朝鮮半島経由で日本列島に渡ってきた「冷温帯動物群」の一種で、日本列島では北は北海道から南は九州まで分布している。頭骨前縁に鉢巻状の出っ張りがあり、顎の先端は短く、強く曲がった牙を持つ。
東アジア地域では、黄海・東シナ海の海底からもナウマン象の化石が出土する。日本列島でも瀬戸内海でおびただしい化石骨や歯牙が産出し、リス=ビュルム間氷期に当たる「下末吉海進」の温暖な時期に大いに発展した。ナウマン象は南方系と考えられていたが、寒冷な北海道忠類村で全骨格が出土した。長野県野尻湖では、ほぼビュルム氷期に当たる下部野尻湖層Ⅲから、上部野尻湖層Ⅰまでの湖成層中から、ヤベオオツノジカ・ヒグマなどの化石とともに小型の石器・骨器、そして木器などが出土した。岩手県花泉(金森)遺跡では、野牛の一種ハナイズミモリウシ、ヘラジカなどとともにアカエゾマツ・チョウセンゴヨウなど亜寒帯性針葉樹の植物遺体が共存し、寒冷な気候にも適応した。
(中山清隆)
以上、転載
