龍 りゅう
龍
りゅう
古代中国の想像上の霊獣。日本では水神や雨乞いなどと関連して、龍をめぐる信仰は現在まで続いているが、土器の絵画として、また、墓の被葬者の側に貝殻を集めて龍が表現されるなど、その起源は中国・新石器時代の仰韶文化にさかのぼるようである。殷から西周時代には、青銅器や玉器などにさかんに龍の文様が描かれた。漢代には、四神図の青龍として方格規矩鏡の図像や古墳壁画に取り入れられ、しばしば王権の象徴とされることもあった。日本では、弥生時代後期の土器に龍と思われる動物の絵画が描かれるものがあるが、表現は稚拙であり、どの程度、龍の思想を理解して取り入れられたかどうかは不明である。古墳時代の6世紀頃には、環頭大刀の把頭部分に双龍文の装飾を施すものが出現するが、三国時代百済の武寧王陵出土大刀に見られるような朝鮮半島の大刀に装飾された龍が祖型となったものと思われる。古墳時代終末期には、高句麗の壁画古墳などの影響を受け、日本でも福岡県竹原古墳の龍媒伝説に関わると想定されている龍馬や、奈良県高松塚古墳やキトラ古墳の壁画に描かれた四神の青龍として、装飾古墳の壁画に具体的な形で描かれるようになり、当時の支配者層に本格的に龍の思想や意義が理解されるようになったと考えられる。
(鐘ヶ江賢二)
以上、転載
