青谷上寺地遺跡 あおやかみじちいせき

青谷上寺地遺跡
あおやかみじちいせき

鳥取市（旧気高郡）青山町青谷に所在する。およそ1.5km四方の青谷平野の中央部に位置し、現地形ではうかがうことはできないが、当時の地形の高低を利用した遺跡が残されている。地形の高かった所では無数の土坑群やピット群が検出されているが、周辺の低湿地部では一部水田域を確認している。いずれにおいても厚い遺物包含層が形成されており、複数の遺構面が存在する。遺跡は弥生時代前期後半に集落としての姿を現し、中期後葉に著しい拡大を遂げ、後期に続くが、古墳時代前期初頭に突如として姿を消す。1998〜2001年度（平成10〜13）にかけて、道路改良工事に伴い鳥取県教育文化財団が発掘調査を行った。調査地点はおそらく遺跡の南側縁辺部に当たるものと思われ、住居域は確認していないが、遺構のあり方や多彩な遺物の出土で注目を集めることとなった。

遺構で目を引くのは、スギの板材を用いた護岸施設である。遺跡の南東部で検出された弥生時代中期後葉段階の護岸施設には長さ2.60m、幅70㎝の巨大な板を数枚立て並べたうえ杭で固定していた。後期になると地形の高い範囲を取り囲むように溝がめぐらされるが、ここには矢板列を幾重にも打ち込んでいた。こうした護岸施設の中には建築部材を転用したものを含むと思われるが、周辺にあった相当量のスギ材を伐採・加工していたことがわかる。遺物は膨大な数の土器以外に、鉄器・青銅器・木器・石器・骨角器など多彩で、低湿地遺跡であるが故に遺存状態も良好で、「弥生の地下博物館」と呼ばれるに相応しい。さらに後期の殺傷痕を持つ多量の人骨や脳組織の発見もあり、弥生時代に関する情報量の多さは特筆される。

（湯村功）

以上、転載