豚 ぶた


ぶた

ブタはイノシシを祖先種とする家畜で、遺跡からの出土例は西アジアが約9000年前と古かったが、近年中国でも同時代から出土が報じられる。先史時代のイノシシとブタは、骨では区別が難しく、たとえブタが出土しても、その起源地から人間に連れられてきたのか、飼うという技術の伝播により、各地で在地のイノシシを飼養し、家畜化したものか判断が難しい。日本では7〜12世紀のオホーツク文化の遺跡から、カラフトブタが出土することが知られていた。北海道道南地方では縄文時代後期から続縄文時代にかけて、また伊豆諸島では縄文時代早期から、佐渡では縄文時代中期からイノシシが出土し、飼養されたイノシシを船で運んだか、更新世の残存種か議論が分かれる。本州では長崎を除けば幕末、明治になるまでブタは存在しなかったと考えられてきたが、西本豊弘は弥生時代にブタがいたことを骨の形態変化から指摘したが、渡辺誠・小沢智生らは否定論を展開した。松井章らは弥生時代併行の沖縄県伊江島志原貝塚には、リュウキュウイノシシよりもはるかに大きい個体が出土することから、他地域から移入されたブタが存在した可能性を指摘し、分子生物学、炭素・窒素安定同位体による食性分析などの考古科学的研究によって、ブタの存在を証明した。

松井章)

以上、転載