柄鏡 えかがみ
柄鏡
えかがみ
鏡体の一端に手持ち用の柄をつけた鏡のこと。エジプト、ギリシア、西アジア、ペルシアなどでは古くから製作・使用されていたのに対し、古代中国では鈕鏡(鏡体に柄がなく鏡背の中心につまみがあり、それに紐を通す孔がある鏡)が盛行した。中国では南宋代になって湖州鏡に柄鏡が現れ、やがて朝鮮の高麗鏡にも現れた。高麗時代には宋・元代の鏡や漢式鏡・唐鏡などを模倣して鏡が盛んにつくられたが、これらは高麗鏡と総称されている。日本に柄鏡が出現するのは室町時代末であるが、初現・成立期の柄鏡は柄が細長く、なかには小型の鈕鏡に柄をつけただけのものや、柄の先端に小孔を穿っただけのものがある。柄鏡の出現は行き詰まっていた鏡背文様の構成に新風を吹き込むことになり、鋳鏡は再び活況を呈した。やがて江戸時代には和鏡形式の主流となった。江戸時代のものは一般に柄の幅が広くて短い。江戸期には柄鏡とともに伝統的な円鏡もつくられたが、それらは柄鏡の流行に押され、御神鏡や婚礼調度用の特別なものだけになっていった。
(藤丸詔八郎)
以上、転載
