胞衣壺 えなつぼ
胞衣壺
えなつぼ
出産後の後産を入れて埋納するための容器。誕生した子供の成長と出世を願う習俗である。民族例では、戸口や間口など通り道で人によく踏まれる場所や、便所の脇、墓地の一角などさまざまな埋納例が知られている。縄文時代の竪穴住居跡の埋甕を胞衣壺に推定する考えもある。確実な類例が増えるのは奈良時代まで降る。平城京跡や秋田城跡で典型的な例が発見されている。平城京右京五条四坊三坪では、須恵器壺Aの中に墨・筆管・和銅開珎4枚が納められ、秋田城跡では須恵器壺Aに万年通宝5枚と「胞衣と考えられる褐色物質」が埋納されていた。近世では男児は胞衣と墨・筆管を、女児は針・糸を埋納するとされるが、奈良時代には女児例は発見されていない。内容物が残っていない場合は、土器内土壌の脂肪酸分析で胞衣に類する脂肪酸を分析して確定する試みが行われている。ただ、周辺土壌からの汚染や解析時の資料操作など留意すべき点が多い。
(杉山洋)
以上、転載
