二里岡文化 にりこうぶんか
二里岡文化
にりこうぶんか
Erligang wenhua
中国・殷時代前期の文化。河南省鄭州市二里岡を標準遺跡とする。従来「二里岡下層文化」と「同・上層文化」の2期に区分されてきた。1950年代以来の調査と検討を経て、近年では先商文化(二里頭文化並行期)ー殷前期文化(二里岡期)ー殷中期文化(花園荘期)ー殷後期文化(殷墟期)という一連の流れが把握されるに至った。
分布域は、河北省南部から黄河南岸の平原地帯を中心としつつ、山東西部・長江流域・陝西東部・山西中南部などにも展開し、二里頭文化に比して格段に拡大した。代表的遺構としては、鄭州商城を初めとする城郭と、その内部の大型建築跡が挙げられる。墓葬は中型以下のものに限られ、王墓を想起させるような隔絶した規模のものは、なお発見されていない。土器は縄蓆文を施した灰陶を主とするが、二里岡上層期には新たに灰釉陶器が登場した。炊器(鬲・甑など)・盛食器(豆・簋など)・貯蔵器(盆・大口尊など)といった日常的な器種が先商文化以来の伝統上にある一方、酒器(爵等)のように何らかの儀礼を想起させる器種では、二里頭文化の伝統を引いている点が注目される。この現象は、「礼器」である青銅器と玉器においてはより明確である。とりわけ青銅器は、二里頭文化の伝統の上に質・量ともに大幅な向上を見せる。多くは中型墓の副葬品として発見され、鼎・斝・觚・爵・罍の組み合わせが一般的である。また、鄭州商城城外の祭祀坑遺跡からは、器高1mに達する大型の方鼎が出土している。この種の方鼎は、遠く江西省や山西省にも類例があり、鋳造技術のみならず原料の確保と流通、青銅器を媒介とした祭政秩序といった、殷王朝の支配構造を考える上でも重要な資料である。
(鈴木敦)
以上、転載
鬲
カク、レキ、かなえ
詳しくは こちら
甑
ソウ、こしき
豆
ズ、トウ、まめ、たかつき
意味:供物をのせる器、春秋時代の量の単位
簋
キ
意味:穀物を盛る円形の祭器
爵
シャク、さかづき
鼎
テイ、かなえ
斝
カ
意味:三足または四足、酒を温める器。
詳しくは こちら
觚
コ、かど、さかずき
罍
ライ、さかだる、もたい
