舟形石棺 ふながたせっかん

舟形石棺
ふながたせっかん

古墳時代の刳抜式石棺の一形式。身と蓋からなり、それぞれ一石を刳り抜いて製作する。縄掛突起と呼ばれる短い棒状、もしくは半環状の突出部が身と蓋の両端に備わり、側面にもさらに加わることがある。身と蓋を合わせた横断面形がやや扁平であることにより、同じ刳抜式石棺である割竹形石棺とは区別される。前期後半から中期にかけてのものが多いが、一部後期の製品もある。多くは直葬もしくは横穴式石室内に納められる。九州を中心に山陰・北陸などに多く分布し、近畿には少ない。石材は在地のものを使用することが多く、形態的にも多様となっている。九州では

家形の蓋を有する刳抜式石棺も舟形石棺と称しており、その系譜を引くピンク石の阿蘇溶結凝灰岩を用いた舟形石棺が大阪府長持山古墳(2号石棺)などに認められ、畿内系家形石棺の成立に大きな影響を与えたと考えられている。舟形の名称から舟葬説に結びつける考えもあるが、関連性を見い出すことには無理があろう。

(福尾正彦)

以上、転載