原始瓷器 げんししき

原始瓷器
げんししき

磁器は中国で出現し、商代中期から戦国時代に至る1000年を越す長い期間、徐々に進歩したとされる。初期のものは一種の灰釉陶器でもあったが、それらが磁器への過渡的な段階としての条件を充たした施釉陶器であることから、中国で原始瓷器、あるいは原始青瓷と呼ばれている。一般に灰釉は、高火度で焼く窯で器に降りかかった灰によって、胎土の珪酸分が融けて器表に生じた自然釉を起源とし、日本や朝鮮の灰釉陶器をはじめ、世界各地でこの系統の発展が見られる。しかし、中国でいう原始瓷器は、前段階としての自然釉陶器の存在は確認されず、当初から施釉陶器として生産されたといわれている。しかし、2000年(平成12)に日本で開催された「時期の誕生ー原始瓷器」展において、中国で原始瓷器とされているものの一部が自然釉であることも指摘されている。

原始瓷器の出現には、長江中・下流域や東南沿海一帯の地域で盛行した印文硬陶の生産技術が深く関わっているとされ、器形や文様にも共通のものが多い。従って、当初の生産の中心は長江中・下流域にあったが、次第に生産地を黄河中・下流域などにも拡大していったと考えられている。後漢時代には器種や文様にも変化が現れ、成形技法や施釉方法が改良され、主要産地であった浙江省の窯などでは、需要の増大と生産の拡大に伴って、本格的な青磁へと転換した。それは、その後の中国陶磁の展開を方向づけた画期的なできごとでもあった。

(上田秀夫)

以上、転載

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