御物石器 ぎょぶつせっき
御物石器
ぎょぶつせっき
縄文時代の特殊な磨製石器。「ごもつせっき」ともいう。晩期前半に流行した呪具で、北陸・中部地方に多く分布する。現在、全国で50個ほど出土しているが、特に岐阜県を中心とした益田川・飛騨川・神通川沿いで発見例が多い。「枕石」ともいわれるように枕に似ており、比較的大型(長さ20〜40㎝程度)で重量感がある。中央からやや偏った位置に大きな抉りが見られ、両側面に渦巻文・E字文・弧状文などの文様が浮彫り、もしくは陰刻されている。文様のないものもある。天羽利夫が文様構成によって型式分類したのに対し、橋本正は横断面によって下面(背面)が広い濃尾型と下面が狭まる逆三角形で、やや細身の北陸型に分類して編年を行った。安山岩・砂岩・黒色粘板岩・緑泥片岩などを使用し、敲打ないし研磨で作られている。赤色顔料を塗った例もあり、形や作りから呪具・儀礼具と考えられる。1遺跡で1点という場合が多く、集団の儀礼に関わる石器と考えられるが、具体的な用途は不明である。石川県御経塚遺跡では石囲いの中に置かれた状態で出土している。1877年(明治10)石川県比良遺跡で一農民によって初めて発見された。近くの寺から2個が京都の本願寺に寄進され、本願寺からさらに明治天皇に献上されて帝室御物となったことから、御物石器の名の由来がある。その名称が形態・用途と関係なく付けられたため、「比良型呪具石器」と呼ぼうとする意見もある。
(中山清隆)
以上、転載
