握斧 あくふ

握斧
あくふ

ハンドアックス(握槌)ともいう。韓国語で握斧と表現するが、形態的にアフリカ・インド・西アジアの前期旧石器時代の直接打法によって製作された大型両面加工石器に似るためこの名がつけられた。西アジア以西のものは杏仁形・心臓形・楕円形・三角形などがある。韓国では、全谷里遺跡や舟月里・佳月里遺跡に代表される臨津江・漢灘江流域を中心とした地域に集中的に出土するが、全国で30ヵ所以上の出土地が知られる。時代も前期旧石器時代から中石器時代のものまで幅広く呼称され、若干その定義に混乱が見られる。アフリカの例は160万年前を最古例とするが、韓国ではその出現の時期もおよそ30万年前~7万年前と、年代の評価が一定していない。臨津江・海灘江流域の資料は珪岩の剝片および礫を素材として、片面調整加工を主としながら、裏面に補助的な調整加工を施し、鋭利な先端と礫面を残した無加工の基部が特徴的である。大きさは10~20㎝前後のものが多いが、20㎝を超える重厚なものも存在する。調整加工が西アジア以西のものに比べ若干粗い点や、時期が新しいこと、石器組成における比率の低さなどから、アジア的な変容を受けたアシューリアン伝統として、全谷里遺跡出土石器にちなんで、チョンゴニアンと称される場合がある。

(小畑弘己)

以上、転載