方格規矩四神鏡 ほうかくきくししんきょう

方格規矩四神鏡
ほうかくきくししんきょう

中国の前漢末から後漢の前半代を中心に流行した鏡であり、「永和二年(BC15)」(洛陽五女家267号墓出土)および「始建国二年(AD10)」と「天鳳二年(AD15)」の年号鏡がある。幾何学文を平彫りした前漢鏡の背文を一新して、方形とT・L・V字形を配置した、いわゆる方格・規・矩の文様に加えて、四方をつかさどる四神(玄武・青龍・白虎・朱雀)を動物文として細線で表出した特徴的な文様を持つ鏡である。TLV鏡とも呼ばれた。鏡体の円形と方格・規・矩の文様を総合して「天円地方」の宇宙観を表現したとの解釈がある。この様式の中には「新興辟雍建明堂」など「新」の「王莽」の治世を謳った銘文を持つ鏡があり、これらは特に「王莽鏡」と呼ばれた。中国各地の後漢代の墳墓や楽浪郡の墳墓から多数出土し、わが国でも弥生時代後期の墳墓や、古墳時代前期の古墳から多数出土している。香川県高松市鶴尾神社4号墳出土鏡は「伝世鏡論」の発端となった著名な鏡である。

(藤丸詔八郎)

以上、転載