方形周溝墓 ほうけいしゅうこうぼ

方形周溝墓
ほうけいしゅうこうぼ

平面形が方形で低い墳丘を有し、周囲に溝をめぐらした墓。埋葬施設は土壙が一般的で、木棺・石棺・土器棺などもある。複数の埋葬施設を有するものも多い。弥生時代から古墳時代前半にかけて、ほぼ列島各地で営まれた。墳丘は流出したり、削平されていることが普通である。方形台状墓と合わせて、低墳丘墓もしくは墳丘墓と総称されることもある。1964年（昭和39）東京都宇津木向原遺跡で発見された遺構について、大場磐雄が命名したことを端緒とする。その最古例は、弥生時代前期初頭の福岡県東小田峯遺跡で、墓域を方形にめぐる周溝が確認されている。本例からしばらくは空白期間があって、弥生時代前期中葉になると、大阪府東奈良遺跡など大阪府下とその近接する地域に認められるようになる。その後、徐々に分布域を拡げ、後期になると東日本で造営が盛んとなる。弥生時代末から古墳時代初頭にかけては、東日本・九州地方に集中し、近畿では急減する。

副葬品は少ないが、玉類・鏡などを副葬するものがある。溝などからは祭祀に関わるとされる土器類が出土することが多い。近畿では弥生時代の有力世帯の家族墓・同族集団墓とされているが、関東では高塚古墳と時期的に併行することから、古墳に埋葬されなかった首長層やその成員の墓とする説がある。後期以降になると、1基当たりの埋葬数を減じる傾向があり、造墓数も少なくなる。副葬例の増加とも対応することから、より有力者の墓制へと変質したと考えられている。近年、関東を中心として前方後方形周溝墓の発見が相次いでおり、今後これらとの関係を含めた研究の進展が望まれる。なお、円形の溝を有するものは円形周溝墓と呼ばれている。最近、朝鮮半島南部の無文土器（青銅器）時代の遺跡からも周溝墓が発見されており、日本の周溝墓の源流を半島に求める見解も示されている。

（福尾正彦）

以上、転載