皇南大塚 こうなんおおつか
皇南大塚
こうなんおおつか
Hwangnam-daechong
韓国・慶州市皇南洞に所在し、慶州にある三国時代新羅の古墳群で最大の積石木槨墳。南・北二つの円墳からなる長径120mの双円墳で南・北墳の底径80m、高さは南墳22.2m、北墳22.9mを測る。1975年に国立文化財研究所によって発掘された。未盗掘墳である。墳丘の切り合い関係から、南墳が先に築造された。南墳の積石木槨構造は主槨と副槨からなる。主槨は二重の槨と棺からなる。内槨は四壁を囲み、外槨との間に高さ1.8mに石を充填し、壇状に造る。外棺内に副葬品収蔵部がある。主槨から金銅製冠帽・金製鳥翼形冠飾・硬玉勾玉・金銅製環頭大刀1・馬具・金属器、ローマン系の鳳首形ガラス瓶・ガラス坏など15049点が出土した。金銅製冠は山字形としてもっとも古い。慶州校洞古墳の金冠や福泉洞22号墳墓の金銅製冠から発達した形態で、新羅の身分制を表す。
副槨では、環頭大刀30・鉄矛543・鉄斧80・鋳造斧形品300・鉄鋌1332枚などの鉄器、玉虫装飾金銅透彫鞍金具などの馬具、金属器・土器など7494点が副葬されていた。装身具・武器・馬具など高句麗の影響を受けている。漆器小盌の蓮華文は、中国・遼寧省桓仁県の米倉溝1号墳の壁画の文様と類似する。高句麗製で南墳・北墳に分けて副葬されていた。5世紀前半の高句麗軍の新羅王都への駐屯など、高句麗王権との関係を裏づける。北墳は、木槨内に内外二重の木棺を配置し、外棺をコの字状に囲む石壇を造る。外棺内に副葬品収蔵部を設ける。南墳の木槨内壁の壇が、木棺周囲を囲む壇に変わる。35648点の遺物が出土した。山字形金冠・金製銙帯・腰佩・三葉環頭大刀6・鉄刀子、金・金銅・銀装鉄刀子各1、鉄矛3・鉄鏃38などの鉄器、馬具・金属器などが出土した。銀製腰佩の垂飾端金具の「夫人帯」銘文から、王妃墓と見られる。年代について、南墳は5世紀中葉ごろ、北墳は5世紀後葉ごろと推定される。皇南大塚の南墳は訥祗王陵(〜451年)の可能性がある。したがって墳丘や木槨積石の規模、副葬品など質量は、5世紀中葉〜後半の新羅王の権力の大きさを示す。武器など鉄の出土量が膨大で、その生産の中心は隍城洞製鉄遺跡である。
(東潮)
以上、転載
*辞典解説文より漢字ピックアップ
銙
カ
佩
ハイ、おびだま、お(びる)、は(く)
