石包丁 いしぼうちょう

石包丁
いしぼうちょう

弥生時代に水稲農耕とともにわが国にもたらされた大陸系磨製石器群の一つである。石包丁は頁岩・粘板岩や緑色片岩を長方形・楕円形・半月形に研磨した扁平な石器で、一方の長辺に刃が付いている。体部の中心に2個の穿孔があり、これに紐を通して指をかけ穀物の穂を摘むのに用いた。孔を開けずに両端に抉りを入れた石包丁もある。瀬戸内海地方では安山岩を用いた打製石包丁がさかんに用いられ、孔のかわりに両端に抉りがある。石包丁の名は、明治時代にエスキモーの女性が調理用に用いていた小刀（包丁）との比較によって誤認した命名であるが、そのまま現在も慣用されている。中国・朝鮮では石刀と呼ばれている。石包丁は中国・台湾・朝鮮・日本・東南アジアなどに広く分布している。そのほか、類似品はイランのスサ第Ⅰ層から出土しているし、アメリカインディアンの遺物にも見られる。中国では仰韶文化および龍山文化に、朝鮮では無文土器（青銅器）文化に使用された。わが国では、稲作農耕導入期に穂刈りによる品質改良を促進し、稲作定着に大きな役割を果たした。

（中村修身）

以上、転載