石杵 いしぎね

石杵
いしぎね

石臼とセットをなす破砕・粉砕のための棒状の磨製石器。川原石状の磨石、すりこぎ状の磨棒は類似の用途のものである。通例は植物質食料の加工用であるが、鉱物質顔料の粉砕、食材の磨り潰し用調理用具として使う例も多く、脱穀や製粉などの穀類加工には限定されない。終末期旧石器時代以降、世界的に広く分布している。西アジアではBC16500〜12500年頃、ケバラ文化にムギ脱穀用石杵が石臼とともに出現し、以後、鉱物質顔料の粉砕やムギの脱穀、製粉などに使用された。東アジアでは華北の磁山・裴里崗文化において磨棒が磨臼とセットでミレットの製粉に、縄文時代には磨石を堅果類の粉砕に使用された。東南アジアではフナンやドヴァラヴァテイー時代以降、カレー用スパイスを磨り潰す調理具として、石皿とセットで使用された。オセアニアでは東ポリネシアを中心に、タロイモなどを磨り潰すのに底部の広がった形状の石杵を使用している。北方狩猟民のなかでは、肉・脂肪を磨り潰す調理用具としての例もある。

(新田栄治)

以上、転載