位至三公鏡 いしさんこうきょう

位至三公鏡
いしさんこうきょう

わが国の古墳出土鏡の中には、鈕を間にはさんだ帯状の銘帯で内区を2等分し、その銘帯上に「位至三公」の4文字を配した鏡がある。径7〜8㎝の小型鏡であるが、銘文が明確なわりには、内区文様が何を表現したものかわからないほどに便化している。そのため、銘文を鏡式名として位至三公鏡と呼ばれてきた。この鏡はもともと中国の後漢後半に華北地方を中心に流行した双頭龍文鏡の便化形式である。双頭龍文鏡とは、胴体の両端に龍と獣、あるいは鳳と獣の頭をつけた双頭の動物文を平彫り風に表出した文様を持ち、合わせて、帯状の銘帯で内区を2等分する文様構成を持つ鏡である。Ⅰ〜Ⅲタイプに分類され、古いⅠ式では内区外周に内行花文帯がめぐり、鈕帯には「位至三公」ではなく「長宜子孫」や「君宜高官」の4文字を配するなど、後漢中期に流行する獣首鏡や䕫鳳鏡と形態上類似する点が多い。Ⅱ・Ⅲタイプでは「位至三公」銘が主流となるが、Ⅰ・Ⅱタイプは弥生時代後期後半の遺跡から出土し、新しいⅢタイプは4〜5世紀の古墳から出土するという傾向が見られる。

(藤丸詔八郎)

以上、転載