火舎 かじゃ・かしゃ

火舎
かじゃ・かしゃ

香炉の一種で、ほんらい火鉢のような暖房具であるが、のちに焼香具・仏具としても用いられた。唐代に中国とその周辺で流行したようで、敦煌の仏画に見られ、中国・陝西省西安市何家村遺跡出土の五脚香炉に火舎香炉の原型を求めうる。鉢形の灰盤に3脚もしくは5脚の獣脚が付くものが多い。奈良市正倉院中倉の白色火舎と金銅火舎は有名で、前者は大理石の灰盤に金銅製の環と獅子形の脚が五つ付く。奈良・平安時代には瓦質・陶製(奈良三彩・須恵器・緑釉など)で獣脚が三つ付くものが寺院跡などで出土する。藤原期になると、密教法具として六器の一つとなる。和歌山県那智山経塚群出土の火舎の身には3脚が付き、蓋には猪目透かしがあり、京都府花背例とともに経塚遺跡出土品として知られる。群馬県上栗須寺前遺跡では銅製火舎香炉(鎌倉時代、日本製)が、花瓶(けびょう)・青磁・白磁などを密壇供一式として組み合わせた状態でまとまって埋納されていた。火舎香炉は直径10.7㎝で、宝珠形鈕のついた蓋と3脚を持つ身からなる。蓋には飛雲形の透かし孔や毛彫りの飛鳥文が配され、身の上端は鐔状に張り出して身を受け、簡素で短い脚がつく。

(中山清隆)

以上、転載

 

 

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