カラスク文化 からすくぶんか

カラスク文化
からすくぶんか
Karasu culture

ロシア・南シベリア、ミヌシンスク盆地を中心とした、エニセイ中流域の青銅器時代の文化。先行のアンドロノヴォ文化と多くの点で異なる。特有の内反りの刀子や短剣はバイカル湖東南地域、モンゴリア、商周時代の中国北部の出土品に似ている。また用途不明の「弓形器」と呼ばれる青銅器の類似遺物も発見されている。さらに、同様の刀子や短剣はウラル地方やヨーロッパ東部地域でも発見され、東西にまたがる広い交流が行われたことが推測されている。これらを有力な根拠として、中国北辺のモンゴロイド系住民の移動を説くS.V.キセリョフ説が、起源・系統関係を含めた諸問題など学界に与えた影響は大きい。1960年代のダム建設で水没する多数の古墳群や集落跡が調査された。現在は古墳群や遺物の組合せの分析から、ふつうカラスクとカーメンヌイ・ログ(またはルガフスコエ)の2類型に分類されるが、両類型の起源・年代・系統関係など未解決の課題が多い。古墳の多くは板石の方形の石囲いで墓域が造られるが、中心の石囲いに接して新たな石囲いを増設するのが特徴である。丸底、器高の低い小型の土器もこの時期の特徴である。

(藤川繁彦)

以上、転載