キジル(克孜尓)石窟 きじるせっくつ

キジル(克孜尓)石窟
きじるせっくつ
Kizil-shiku

中国・新疆ウィグル自治区拝城県にある石窟寺院群。クチャ(庫車)の県城から東南に約67㎞の所にある。東に向かって流れる渭干河(ムザルト河)の北岸の崖に236窟が穿たれている。新疆ウィグル自治区では、もっとも大きな規模を持つ石窟である。石質は砂岩である。大きな谷(ソグド溝)をはさんで、谷西区に81窟、谷内区に55窟、谷東区に70窟、後山区(ドイツ隊の第2区・第3区)に30窟がある。1903年に第1次大谷隊の堀賢雄と渡辺哲信が初めて調査し、06年に第3次ドイツ隊のグリュンヴェーデルとル・コックが本格的に調査した。その後、07年にフランスのペリオ、ロシアのベレゾフスキー兄弟、09年に第2次大谷隊の野村栄三郎、13年に第3次大谷隊の吉川小一郎、第4次ドイツ隊のル・コックが調査した。近年では、79年から81年にかけて、北京大学歴史系石窟考古実習班と拝城県キジル千仏洞文物保管所が調査を行った。

石窟の型式は、蒲鉾天井を頂く中心柱窟、穹窿(クッポラ)天井や隅三角持送り天井をいただく方形窟、正壁に大像を表現する大像窟、僧房窟などがあり多彩である。壁画の画題は仏伝図・本生図・仏説法図などが多い。造営の時期は、これまで5世紀末から7世紀と考えられてきた。ドイツ隊の調査と考察に基づき、ガンダーラ美術と関連が強い古い様式の壁画が500年ころに、イランやインドの影響を受けつつ、古い様式をこの地域独自に展開させた新しい様式の壁画が600年ころから650年ころに造られたとされてきたが、近年の中国による調査で、放射性炭素を用いた年代測定が行われ、その後ドイツでも同様の測定が行われた結果、今日では造営の時期をやや早める見解が示されている。

(中野照男)

以上、転載