黒曜石 こくようせき

黒曜石
こくようせき

マグマの急冷によって生じた岩石で、色は黒色・赤褐色・灰色などを呈し、ガラス光沢を有する流紋岩〜石英安山岩質のガラス質火山岩。硬度は比較的高く、貝殻状の断口を示し、打ち欠いて石器を製作するのに適していることから、世界各地で石器の材料として用いられた。日本では北海道白滝や東京都神津島、長野県和田峠や、佐賀県腰岳などの産地が知られており、また東アジアでは、中国と北朝鮮との国境地帯に所在する白頭山が黒曜石産地として有名である。旧石器時代以来各地の産地から黒曜石が採取され、さまざまな用途の石器が製作された。剥離技術論や編年論など研究の進展によって、各時代と地域で多種多様な製作技術が存在することが明らかにされている。また朝鮮半島や中国・ロシアの極東地域における分析が蓄積されるにしたがって、極東の新石器時代のザイサノフカ文化における白頭山産の黒曜石の流通形態や、朝鮮半島南部島嶼域における腰岳産黒曜石製石器の受容などが把握され、各地の黒曜石の需要に応じて、現在の国境の範囲を越えた広域な流通が行われていたことが明らかにされている。

黒曜石製石器の使用は、弥生時代の鉄器の流入にしたがい衰退していくが、東北地方や北海道では古墳時代および続縄文時代に至るまで使用が継続された。最近における石器の製作技術や機能の研究は、実験的研究や使用痕分析などを取り入れることで大きく進展してきており、また、蛍光X線分析による産地推定や黒曜石水和法による年代推定など、自然科学と連携した研究も活発に行われている。

(鐘ヶ江賢二)

以上、転載