味鄒王陵地区古墳群 みすうおうりょうちくこふんぐん
味鄒王陵地区古墳群
みすうおうりょうちくこふんぐん
Michuwangnugjigu-gobungun
韓国・慶尚北道慶州市皇南洞に所在する三国時代新羅の古墳群。慶州総合観光開発計画の一環として、現在「大陵苑」と称される味鄒王陵地区古墳公園およびその東側の鶏林路一帯の整備事業を行う際に発掘調査された。味鄒王陵(皇南洞106号墳)、皇南大塚(皇南洞98号墳)や天馬塚(皇南洞155号墳)の周辺に当たる。調査は1973年より74年にかけて国立慶州博物館・扶余博物館と、ソウル大学校・高麗大学校・壇国大学校・梨花女子大学校・釜山大学校・慶北大学校・嶺南大学校の博物館によって行われ、100余基の古墳が発掘された。
墳丘は削平されてなかったものの、5〜6世紀代を通して営まれた小型の積石木槨墳・竪穴式石槨墳・甕棺墓が多数密集して発見された。一墳丘内に一槨のみならず複数の槨を持つ多槨墳、それも2・3槨に止まらない多くの槨を営造したものも多い。慶州ではそれまで調査例のなかった甕棺墓も多数発見され、また馬を埋葬した施設など、今までに知られなかった施設が付随した古墳もあるなど、様々な構造の古墳が調査された。貧弱な遺物相の小型古墳が多いなか、第7地区5号墳のように金銅冠・白樺樹皮製冠帽・金製耳飾・馬具一式・大刀・鉄刀子・鉄製有棘利器・鉄鏃・鉄鎌・鉄鏟・鉄鋌・土器など、豊富な副葬品を出土した古墳がある。また、鶏林路14号墳で装飾宝剣・金装鬼面装飾鏟具・馬具類、C地区3号墳で瑞獣形土器、C地区4号墳で象嵌ガラス玉装飾、鶏林路25号墳甕棺墓で車形土器・ミニチュア土器類、鶏林路30号墳で弾琴人物・カモ・魚・カメ・カエル・ヘビなどの土偶が付けられた土偶装飾長頸壺など、特異な遺物を出土した古墳も多々ある。
新羅墓制の多様性や葬送儀礼・信仰、ローマ文化圏との交流などを示す遺構・遺物が発見され、新羅文化を研究する上で大型古墳に勝るとも劣らぬ重要な史料となる古墳群である。
(藤井和夫)
以上、転載
*辞典解説文より漢字ピックアップ
鏟
サン
