塼〔朝鮮〕 せん

塼〔朝鮮〕
せん

粘土を焼いてレンガのように仕上げたもの。墳墓や建造物などの用材の一部として使われた。朝鮮半島では、楽浪郡の治所跡などにおいて最初に見られる。そこでは、墳墓の用材のほか、歩道の塼敷としても使用された。三国時代には、百済で中期に塼築墳が見られ、武寧王陵では、蓮華文様の塼を多く使って墓室の壁面を飾っているが、中国の南朝様式を踏襲したものである。三国時代以後、仏教寺院の造営が盛んになると、寺院の壁面や床面を飾る文様塼が本格的に作られ始めた。百済では、扶余の窺岩面で出土した鬼面文・鳳凰文・蓮華文などの優雅な文様で飾った方形の塼敷が著名である。百済ではまた、蓮華文を刻んだ箱形塼もある。統一新羅時代に入って、慶州の寺院跡や宮殿跡からは、しばしば見事な方形の宝相華文塼が見られるが、それには側面にも唐草文や双鹿文などを刻んでいる。塼は仏塔の用材としても使われ、慶尚北道仏霊寺の塼塔の用材には仏像や仏塔を刻んだ珍しい例がある。そのほか、慶州の四天王寺跡出土の彩釉四天王浮彫像のある塼は大型で、建造物の壁体の化粧材であったと思われる。日本の塼は、主として朝鮮半島からその製作技術が伝えられたもので、百済系や新羅系のものが出土している。

(西谷正)

以上、転載