敷粗朶工法 しきそだこうほう

敷粗朶工法
しきそだこうほう

軟弱地盤における盛土工法。樹木枝葉、アシなどの植物、スギなどの樹皮を盛土中や地盤との境に敷き、すべりに対する抵抗力の補強や盛土が地盤中へくい込むのを防ぐ。中国・朝鮮半島・日本に広がる。日本では伝統的河川工法として受け継がれている。築堤の土木技術が発達した中国で生まれたと考えられる。安豊塘(安徽省)では1世紀に改修された堤で確認されている。草と粘土が交互に積まれ、散草法と呼ばれている。朝鮮半島には3・4世紀頃に中国から伝わり、風納土城(ソウル特別市)の城壁や碧骨堤(全羅北道)の築堤に使われた。その後の例に、扶余羅城(忠清南道)などがある。

日本には弥生時代に伝わる。上東遺跡(岡山県)では1世紀の突堤にアシ、木材のチップ、木の葉が敷かれる。朝鮮半島の事例より古く、中国から直接伝えられた可能性がある。古墳時代以降は朝鮮半島との交流関係で理解される。亀井遺跡(大阪府)の5世紀の水田には、樹皮と植物の茎を敷く堤が造られる。朝鮮半島から渡来人が持ち込んだ低地の開発方式に含まれていた築堤技術である。616年ごろ築造の狭山池(大阪府)は、築造当初と奈良時代の堤にアラカシなどの枝葉が敷かれ、敷葉工法と呼ばれている。百済から提供されたダム式溜池の築堤技術と考えられる。また、664年築造の水城(福岡県)では、基底部の盛土に敷粗朶工法が使われ、亡命百済官人が指導したと推定される。

(小山田宏一)

以上、転載

 

 

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