硯 すずり
硯
すずり
筆で文字を書く風習は、中国では殷・周時代に存在した。このころ墨汁を作る道具として使われたのは調色器と呼ばれるもので、凹みに顔料と水を入れて磨棒で磨り潰した。中国で墨・筆・硯が出現するのは戦国時代末期で、次の漢代には礫石硯・円形板石硯・長方形板石硯・有蓋三足円形石硯などの石硯のほか、陶硯・木硯・木胎漆硯・夾紵硯・金銅硯も作られた。三国時代以後は円形の陶硯が主流となり、有蓋三足円形硯をモデルとした三足円形硯や多足円形硯が大量に作られた。隋・唐時代にも三足円形硯・多足円形硯・獣足円形硯・蹄足円形硯・風字硯などの陶硯が主流であったが、端渓をはじめとする名石で作った風字硯が出現して以後は石硯が主流になり、抄手硯を経て現在と同じ形の長方形硯が宋代に成立した。中国で発明された硯は朝鮮半島では三国時代に波及し、日本では飛鳥時代に須恵器として作られるようになった。
(吉田恵二)
以上、転載
