土笛 つちぶえ
土笛
つちぶえ
「陶塤(とうけん)」とも称される中空鶏卵形の土笛。そのほとんどは弥生時代前期のものである。上端に吹口、胴部に指孔を持つ。出土範囲は福岡県北部から山陰地方にかけてのほぼ日本海沿岸地域に集中している。元来陶塤とは、中国に見られる土製の塤のことであるが、日本においては先に述べた土笛も指す。これを初めて笛と断定したのは国分直一であり、その根拠は中国新石器時代の陶塤との形態上の類似性であった。古代中国の塤は商代後期にその器形や指孔配置が確立したと考えられる。日本のものはそのほとんどが前面に4孔、背面に2孔を穿っており、商代晩期の塤の指孔配置と酷似している。指孔の操作によって音高は変化させられるが、物理的には息を吹き込むときの角度や勢いを変えるだけでも音高や音色の変化が見られる。ただ弥生時代の土笛からは、その器形の不統一性から当時の音楽上共通した基準となる理論の存在をうかがうことはできないだろう。
(東山喜一)
以上、転載
