雲龍文鏡 うんりゅうもんきょう
雲龍文鏡
うんりゅうもんきょう
主に中国の唐代に流行した鏡である。主文は、半球形の鈕の周りに体をくねらせ躍動的に描かれた1体の龍と、その周りにたなびくような雲気文を配した構図である。まさに龍が天空を飛翔するさまを表している。龍の体部は鱗で覆われ、頭には2本の角を持ち、足には3本の鋭い爪を立てて、口を大きく開けて珠に見立てられた鈕を呑み込もうとする肢体は怪奇でさえある。龍頭が右向きのものと左向きのものがある。外形は葵花形が多いが、八稜形や円形のものもある。一般には厚手で面径が大きく、光沢のある黒漆色を呈するため、重厚な印象を与える。唐代の詩人白楽天の『百湅鏡』には「背有九五飛天龍 人人呼為天子鏡」とあり、飛天龍が詩の主題として登場する。飛龍文鏡は皇帝への献上品や群臣への下賜品として重宝された。広東省詔関の張九齢墓(741年)や、河南省陝県の唐墓(756年)の出土例があり、わが国の正倉院にも雲龍文鏡の一種が保存されている。また、この飛天龍の文様は唐代の金銀製碗の底面部にも用いられた。
(藤丸詔八郎)
以上、転載
