ヤコウガイ製貝匙 やこうがいせいさじ

ヤコウガイ製貝匙
やこうがいせいさじ

殻高・殻長が20㎝前後に到達、重量が2kgを超える南海産の大型巻貝のヤコウガイを材料として製作される貝器で、日本では南海諸島特有の考古資料の一つである。貝匙の厳密な定義は曖昧であるが、広義にはヤコウガイ製容器を含むと理解され、縄文時代相当期から認められる。狭義には柄部が作出された柄杓状形状を呈した容器を指し、飛鳥時代相当期以降に顕著に認められる。後者は、1個の貝殻から1点しか製作できない大型の貝器で、貝殻の内外面ともによく研磨されて、ヤコウガイ貝殻が備えている美しい真珠層まで全面研ぎ出されている。用途については判然としないが、18世紀に成立した『琉球志略』には、酒杯などの用途が記されている。この種の貝匙は、台湾からフィリピンにかけての島嶼地域でも出土が認められる。南西諸島以外では、神奈川県鎌倉市から若干の出土事例が知られている。

(高梨修)

以上、転載