靫 ゆぎ
靫
ゆぎ
矢を入れて背負う古墳時代の武具。実物資料のほか、靫形埴輪や装飾古墳の文様などからもその形状を推察することができる。鏃を上に向けて収めるのが特徴で、鏃を下に向け、右腰に装着する胡籙と合わせ、盛矢具と呼ばれる。矢を挿入する矢筒部の材質は革や織物で、蓋や背負い板が伴うこともある。また、矢筒部の下方には底箱部が、口縁部付近に背当てが設けられていることもある。古墳時代前期の靫にはさまざまな文様が施され、彫刻の施された底箱部を持つなど装飾性に富むが、5世紀以降は装飾性が減少する。靫の内部からは20本から50本程度の鏃が確認されている。靫に収められた鏃の多くが、実戦向けではなく鏃の大量副葬のために創出されたとされる有稜系鏃である。このことから、靫は有稜系鏃を大量に副葬する儀礼行為に伴って、創り出されたものと想定されている。
(大西智和)
以上、転載
